新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行(パンデミック)によって歯科治療に対する不安が高まっています。確かに歯科治療は感染リスクが高い場面が多いことは事実です。感染予防の観点から、3密(密閉、密集、密接)を避けるようにいわれていますが、「密接」なしにはほとんどの歯科治療は成立しません。
歯科治療の現場は感染症との闘いでもあります。A型・B型肝炎ウイルス、エイズウイルス、インフルエンザウイルスをはじめ、さまざまなウイルスや細菌との闘いです。ですから私たちは平常時から感染予防には細心の注意を払っています。
そして、感染症が流行する非常時にはより一層の院内感染対策で臨んでいます。
スタンダードプリコーション
スタンダードプリコーション(標準予防策)に基づいて感染対策に取り組んでいます。
つまり、すべての患者さんが何らかの感染症の可能性があるとして、特定の患者さんだけではなく、すべての患者さんに同じように感染対策をするということです。
ディスポーザブル(使い捨て)製品の使用
患者さんが触れるコップ、エプロン、ヘッドカバー、私たちが使用するグローブ、診療台のテーブルやライトのラッピングはディスポーザブルにしています。
器具・器材の滅菌
診療に使用する器具・器材でお口に触れるもの(ハンドピース、バー、ドリル、歯石除去用のチップなど)は、患者さん毎にオートクレーブという機械で滅菌したものを使っています。
これらは通常行っている感染予防対策です。
特別の対応
新型コロナウイルス感染症の大流行に伴い、「緊急事態宣言」が出されました。当法人の歯科事業所では、通常の感染予防対策に加えて、手指消毒用アルコールの設置、受付の透明カーテン設置、診療室の換気など特別の対応も行っています。また、予約の調整で患者さん同士が「密」にならないようにしています。
より強い信頼関係を
こういった緊急事態の時こそ信頼関係が重要だと思っています。何も精神論で感染予防ができるとは思っていませんが、感染の不安によるパニックや必要な医療の抑制は避けなければなりません。私たちは今できる最善の感染予防対策を行いますが100%予防できるとは思っていません。通院時の感染の機会も含めて感染のリスクは常に存在すると思っています。しかし、歯科治療の重要性も確信しています。不要不急の歯科治療などはありません。百歩譲って不急の治療があったとしても不要な治療はありません。感染に対して抵抗力や体力を付けたり維持するためには食べることが必要であり、口腔ケアによって肺炎そのものを予防することにもなります。例えば、手術やお薬には常にメリットとデメリットがあり、合併症や副作用がデメリットにあたるでしょう。私たちはそのことを十分説明して患者さんご自身に判断してもらいます。同じように歯科治療に来て頂くかどうかは患者さんご自身の判断になりますが、私たちはより強い信頼関係を築けるように努力します。
安心・安全の歯科治療を行うために
安心・安全の歯科治療を行うことは患者さんと私たちの共通の願いです。それも緊急時だけではなく日常的に継続されなければなりません。そのためには感染予防のためのコストが問題になります。今回のコロナ禍の中で感染予防用品の不足と高騰が問題になりました。
私たちの収入の大部分を占める診療報酬のなかでは感染予防にかけられる費用があまりにも少なすぎます。緊急時は一時の赤字を覚悟して対応するとしても継続はできません。診療報酬の改善を求める運動も進めながら、安心・安全の歯科治療を追求していきます。
ご理解とご協力をお願いします。